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短篇集(日文版)-第章

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 が、何分前にも申し上げました通り、横紙破りな男でございますから、それが反つて良秀は大自慢で、何時ぞや大殿様が御冗談に、「その方は兎角醜いものが好きと見える。」と仰有つた時も、あの年に似ず赤い唇でにやりと気味悪く笑ひながら、「さやうでござりまする。かいなでの剑龓煠摔暇tじて醜いものゝ美しさなどと申す事は、わからう筈がございませぬ。」と、横柄に御答へ申し上げました。如何に本朝第一の剑龓煠酥陇弧ⅳ瑜獯蟮顦敜斡挨爻訾啤ⅳ饯韦浃Δ矢哐预陇堡郡猡韦扦搐钉い蓼埂⑾瓤桃悉顺訾筏蓼筏康茏婴⒛凇⿴熃长恕钢橇_永寿(ちらえいじゆ)」と云ふ諢名をつけて、増長慢を譏(そし)つて居りましたが、それも無理はございません。御承知でもございませうが、「智羅永寿」と申しますのは、昔震旦から渡つて参りました天狗の名でございます。
 しかしこの良秀にさへ――この何とも云ひやうのない、横道者の良秀にさへ、たつた一つ人間らしい、情愛のある所がございました。

       五

 と申しますのは、良秀が、あの一人娘の小女房をまるで気摺窑韦浃Δ丝蓯郅膜皮黏渴陇扦搐钉い蓼埂O瓤躺辘飞悉菠蓼筏客à辍⒛铯庵沥膜茪荬韦浃丹筏ぁ⒂H思ひの女でございましたが、あの男の子煩悩(こぼんなう)は、決してそれにも劣りますまい。何しろ娘の着る物とか、髪飾とかの事と申しますと、どこの御寺の勧進にも喜捨をした事のないあの男が、金銭には更に惜し気もなく、整へてやると云ふのでございますから、嘘のやうな気が致すではございませんか。
 が、良秀の娘を可愛がるのは、唯可愛がるだけで、やがてよい聟をとらうなどと申す事は、夢にも考へて居りません。それ所か、あの娘へ悪く云ひ寄るものでもございましたら、反つて辻冠者(つじくわんじや)ばらでも駆り集めて、暗打(やみうち)位は喰はせ兼ねない量見でございます。でございますから、あの娘が大殿様の御声がゝりで、小女房に上りました時も、老爺(おやぢ)の方は大不服で、当座の間は御前へ出ても、苦り切つてばかり居りました。大殿様が娘の美しいのに御心を惹かされて、親の不承知なのもかまはずに、召し上げたなどと申す噂は、大方かやうな容子を見たものゝ当推量(あてずゐりやう)から出たのでございませう。
 尤も其噂は嘘でございましても、子煩悩の一心から、良秀が始終娘の下るやうに祈つて居りましたのは確でございます。或時大殿様の御云ひつけで、稚児文殊(ちごもんじゆ)を描きました時も、御寵愛の童(わらべ)の顔を写しまして、見事な出来でございましたから、大殿様も至極御満足で、
「褒美には望みの物を取らせるぞ。遠懀Г胜帷!工仍皮针y有い御言(おことば)が下りました。すると良秀は畏まつて、何を申すかと思ひますと、
「何卒私の娘をば御下げ下さいまするやうに。」と臆面もなく申し上げました。外のお邸ならば兎も角も、堀河の大殿様の御側に仕へてゐるのを、如何に可愛いからと申しまして、かやうに無躾(ぶしつけ)に御暇を願ひますものが、どこの国に居りませう。これには大腹中の大殿様も聊(いさゝ)か御機嫌を損じたと見えまして、暫くは唯、黙つて良秀の顔を眺めて御居でになりましたが、やがて、
「それはならぬ。」と吐出(はきだ)すやうに仰有ると、急にその儘御立になつてしまひました。かやうな事が、前後四五遍もございましたらうか。今になつて考へて見ますと、大殿様の良秀を御覧になる眼は、その都度にだんだんと冷やかになつていらしつたやうでございます。すると又、それにつけても、娘の方は父親の身が案じられるせゐでゞもございますか、曹司へ下つてゐる時などは、よく袿(うちぎ)の袖を噛んで、しく/\泣いて居りました。そこで大殿様が良秀の娘に懸想(けさう)なすつたなどと申す噂が、愈々拡がるやうになつたのでございませう。中には地獄変の屏風の由来も、実は娘が大殿様の御意に従はなかつたからだなどと申すものも居りますが、元よりさやうな事がある筈はございません。
 私どもの眼から見ますと、大殿様が良秀の娘を御下げにならなかつたのは、全く娘の身の上を哀れに思召したからで、あのやうに頑(かたくな)な親の側へやるよりは御邸に置いて、何の不自由なく暮させてやらうと云ふ難有い御考へだつたやうでございます。それは元より気立ての優しいあの娘を、御贔屓になつたのには間摺窑搐钉い蓼护蟆¥⑸蛴盲撙摔胜膜郡壬辘筏蓼工韦稀⒖证椁癄繌姼交幔à堡螭浃Δ栅铯ぃ─握hでございませう。いや、跡方もない嘘と申した方が、宜しい位でございます。
 それは兎も角もと致しまして、かやうに娘の事から良秀の御覚えが大分悪くなつて来た時でございます。どう思召したか、大殿様は突然良秀を御召になつて、地獄変の屏風を描くやうにと、御云ひつけなさいました。

       六

 地獄変の屏風と申しますと、私はもうあの恐ろしい画面の景色が、ありありと眼の前へ浮んで来るやうな気が致します。
 同じ地獄変と申しましても、良秀の描きましたのは、外の剑龓煠韦吮趣伽蓼工取⒌谝粐砣·辘樗皮凭婴辘蓼护蟆¥饯欷弦惶纹溜Lの片隅へ、小さく十王を始め眷属(けんぞく)たちの姿を描いて、あとは一面に紅蓮(ぐれん)大紅蓮(だいぐれん)の猛火が剣山刀樹も爛(たゞ)れるかと思ふ程渦を巻いて居りました。でございますから、唐(から)めいた冥官(めうくわん)たちの衣裳が、点々と黄や耍蚓Yつて居ります外は、どこを見ても烈々とした火焔の色で、その中をまるで卍のやうに、墨を飛ばした鼰煠冉鸱郅蛏郡膜炕黏畏郅趣⑽瑜铱瘠膜凭婴毪韦扦搐钉い蓼埂
 こればかりでも、随分人の目を驚かす筆勢でございますが、その上に又、業火(ごふくわ)に焼かれて、転々と苦しんで居ります罪人も、殆ど一人として通例の地獄剑摔ⅳ毪猡韦悉搐钉い蓼护蟆:喂剩à胜迹─壬辘筏蓼工攘夹悚稀ⅳ长味啶巫锶摔沃肖恕⑸悉显虑潆吙停à菠膜堡いΔ螭─橄陇掀蚴撤侨摔蓼恰ⅳⅳ椁妞肷矸证稳碎gを写して来たからでございます。束帯のいかめしい殿上人(てんじやうびと)、五つ衣(ぎぬ)のなまめかしい青女房、珠数をかけた念仏僧、高足駄を穿いた侍学生(さむらひがくしやう)、細長(ほそなが)を着た女(め)の童(わらは)、幣(みてぐら)をかざした陰陽師(おんみやうじ)――一々数へ立てゝ居りましたら、とても際限はございますまい。兎に角さう云ふいろ/\の人間が、火と煙とが逆捲く中を、牛頭(ごづ)馬頭(めづ)の獄卒に虐(さいな)まれて、大風に吹き散らされる落葉のやうに、紛々と四方八方へ逃げ迷つてゐるのでございます。鋼叉(さすまた)に髪をからまれて、蜘蛛よりも手足を縮めてゐる女は、神巫(かんなぎ)の類(たぐひ)でゞもございませうか。手矛(てほこ)に胸を刺し通されて、蝙蝠(かはほり)のやうに逆になつた男は、生受領(なまずりやう)か何かに相摺搐钉い蓼工蓼ぁ¥饯瓮饣颏镶煟à恧停─误祝à筏猡龋─舜颏郡欷毪猡巍⒒颏锨б罚à沥婴─闻褪à肖螭袱浃─搜氦丹欷毪猡巍⒒颏瞎著B(けてう)の嘴(くちばし)にかけられるもの、或は又毒龍の顎(あぎと)に噛まれるもの――、呵責(かしやく)も亦罪人の数に応じて、幾通りあるかわかりません。
 が、その中でも殊に一つ目立つて凄(すさま)じく見えるのは、まるで獣(けもの)の牙のやうな刀樹の頂きを半ばかすめて(その刀樹の梢にも、多くの亡者が※(「壘」の「土」に代えて「糸」、第3水準1…90…24)々(るゐ/\)と、五体を貫(つらぬ)かれて居りましたが)中空(なかぞら)から落ちて来る一輛の牛車でござい
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